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zoom RSS 上川あやさんのこと

<<   作成日時 : 2010/11/24 00:23   >>

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いつも、芝居を一つするたびに、いいことも悪いことも色々あるが、そのなかで予想だにしない出会いがあるものである。
今回のことで言えば、なんといっても上川さんと会えたことが、とても印象に残っている。

ことの発端は、モエコさんが、「今日電車で上川さんを見た」と興奮したメールを私に送ってきたことだった。
上川あやさん、世田谷区の議員さんで、身体的には男性として生まれながら、心がそれになじめず、戸籍を女性に変更した人である。性同一性障害、と呼ばれる。
この前の二行の、説明の文を書くのに、何回も書き直した。

「私は女になりたいと思って、こうなったわけじゃないんですよ。自分が苦しくない、自分にしっくりくる姿でいたいと思ってて、そうするために、だんだんこういう女性の姿に近づいていっただけなんです」
上川さん自身が、そのように私たちに話してくれたからである。
女になる、ということが目標だったわけでなく、本当の自分のココロに合う姿を模索して、今の姿になったという上川さんの手を間近でみると、白くてほっそりしている。私の父親似の空手家のような分厚い手とは大違いだ。

今日東京で千秋楽を迎えた芝居『三分間の女の一生』で、前回の公演に引き続き出演しているモエコさんは、今回、自分の性を模索する人物を演じている。
とにかく私たちは、資料などを集めながら、役についての理解を深めようと努力していたが、頭で考えるだけでなく、実際に当事者である人の話を聞くことができないか、と強く思っていた。そういう矢先に、小田急線の電車の中でモエコさんは上川さんを見かけたのである。よほど声をかけようかと思ったが、いきなり話しかけるのも好奇心だけと思われるのではないかとためらわれ、モエコさんは遠慮した。でも、なんとか直接お話が聞けないものかと、モエコさんは私に相談してきて、私がだめもとでメール送って、インタビューさせてもらえないか頼んでみますよ、と請け負った。なんと上川さんはその願いに応えてくれたのである。

梅丘の地下のアトリエまで、上川さんが来てくれるというので、私たちはわたわたと、茶菓子はないか、だの、コーヒーを冷まさないようにコーヒーメーカーごと地下に持ってこうか、だの、緊張しながら準備しているうちに、上川さんが来てしまった。
あんまりにもきれいな人だったので、私もモエコさんも一瞬あっけにとられてしまった。
自己紹介したあと、私がしどろもどろに今回の芝居の説明をして、モエコさんが、「私が実はこうこうこういう役で…」ということを説明すると、
「モエコさんがおやりになるんですか」と
上川さんがフフっと笑った。それで、その場がふっとなごんだ。
この人は、いろんなことがわかっている人だ、と思ったのは、上川さんが、「性同一性障害」の人たちを代表してというのでなく、いろんな人がいて、一人ひとりによって感じ方も違うから、あくまでも自分の場合、ということで、自分のことを語ってくださったからだった。人は、すぐに何かを代表したがるけれど、この人は、人は一人ひとりが違うものだということを知っている。人は本当に孤独なものだ、ということを知っている。
一般化された知識や情報は、ちまたに氾濫しており、私たちはなんなくそれを手に入れることができるが、
上川さんの言葉は、上川さんの口からしかきくことのできないものであり、
上川さんは自分の大切な、身を切るような経験を、惜しげもなく私たちに話してくれた。
梅丘の地下の雑然とした稽古場で、モエコさんと私が上川さんの言葉を、零れ落ちる宝石のように慌てて手で受けて、一滴もこぼすまいとしていたあの時間は、
今思い返しても大変、貴重な時間だったと思う。
私もモエコさんも、芝居のためとはいえ興味本位で聞いていると思われたら、失礼なひとたちだと気を悪くなさったらどうしよう、と、会う前はどきどきしていたが、
上川さんはあっさり、なんのてらいもなく、質問に答えてくださり、自分のこと、社会に対して思うことを話してくださり、
私たちはその器の大きさ、深さに恐れいった。
著作までいただいたので、大切に読んでいる。これを読むとますます、選挙に至る道のりの大変さを想像し、また、この社会のなかで、常識やシステムを変えていけるとしたら、それは私たちの「これが必要だ」という強い思いなのだと感じた。

「多数派の人は、少数派のひとたちの息苦しさになかなか気づけない。だっていつも常識のほうにいる人は、その常識を疑う必要もないから」
自分は演劇の活動をしながら長らく、障害者介助の仕事をやっており、その仕事をするきっかけとなった脳性マヒの女性から、当事者主権という考え方を叩き込まれており、
そのこともあってか、上川さんの考え方には、深く共感するものがあった。

東京の千秋楽が終わった今日、本番を観ながら、この期間中あったいろんなことがフラッシュバックしてきた。

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